大阪地方裁判所 昭和44年(借チ)11号・昭44年(借チ)10号 決定
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〔主文〕 昭和四四年(借チ)第一〇号事件申立人(同第一一号事件相手方)において、別紙目録(二)記載の建物、及び、同目録(一)記載の土地について有する賃借権を、同第一〇号事件相手方(同第一一号事件申立人)に、対価金一、二八七、〇〇〇円にて譲渡することを命ずる。
右譲渡に伴う義務の履行として、同第一〇号事件申立人(同第一一号事件相手方)は、同第一〇号事件相手方(同第一一号事件申立人)に対し、金一、二八七、〇〇〇円の支払と引換えに、同目録(二)記載の建物の引渡し並びに所有権移転登記手続をなし、同第一〇号事件相手方(同第一一号事件申立人)は、同第一〇号事件申立人(同第一一号事件相手方)に対し、右建物の引渡し並びに所有権移転登記手続と引換えに、金一、二八七、〇〇〇円を支払うものと定める。
〔決定理由〕一、(一)、昭和四四年借(チ)第一〇号事件申立人(同第一一号事件相手方)(以下「申立人」という。)の申立の要旨は次のとおりである。
(1)、申立人は、同二〇年八月一日同第一〇号事件相手方(同第一一号事件申立人)(以下「相手方」という。)より、相手方の所有にかかる別紙目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という。)を、木造その他堅固でない建物を所有する目的で、存続期間を定めずに賃借し(以下「本件賃借権」という。)、爾来本件土地上に、別紙目録(二)記載の建物(以下「本件建物」という。)を所有している。なお、賃料は、順次増額されて、現在(同四三年四月以降)は月額二、四〇〇円となつている。
(2)、しかして、申立人は、妻、長男夫婦、孫とともに本件建物に居住していたところ、長男が門真市に住居を新築し一家が右新居に移転することとなつたので、本件建物が不要となつた。
(3)、そこで、申立人は、事前に相手方と、本件建物及び本件賃借権を相手方において買取るか、又は他に譲渡することを承諾するよう折渉を重ねたうえ、不動産取引業者を介して買受の申込をなして来た河野寛にこれを譲渡しようとしたが、結局、相手方は本件賃借権の譲渡を承諾しない。
(4) 右河野寛は大工を営む資力を有するもので、これが本件賃借権を取得しても、相手方に不利となる虞はない。
(5) よつて、右本件賃借権の譲渡につき相手方の承諾に代わる許可の裁判を求める。
(二) これに対する相手方の申立並びに主張の要旨は次のとおりである。
(1) 本件土地を自ら使用したいので、相手方において、本件建物及び本件賃借権の譲受の申立をする。
(2) 本件賃借権の存続期間は同五〇年七月三一日までで、約六年を残すのみであるばかりでなく、本件建物は建築後既に一〇〇年余を経過しており、朽廃寸前にあるものであるから、本件賃借権を第三者に譲渡することを認めることは相当でない。
(三) 右当事者双方の申立に対する鑑定委員会の意見の要領は別紙記載のとおりであるが、これに対する申立人の陳述の要旨は(1)記載のとおりであり、相手方の陳述の要旨は(2)記載のとおりである。
(1) 鑑定委員会の意見中、本件賃借権を相手方が譲受ける場合の対価に関する部分はほぼ妥当であるが、本件建物は、現在も土台、柱などはしつかりしており、補修を施して行けば、今後も朽廃まで数十年の使用に耐え得るものであつて、その価格は三〇〇、〇〇〇円ないし四〇〇、〇〇〇円と見積るのが相当である。
(2) 本件建物の耐用年数は残り少く、向後一〇年内外にて朽廃し、ないしは、朽廃すべかりし時期が到来し、本件賃借権はこれにより消滅すべきものであるところ、相続税法上の取扱いにおいては、地上権の価格を、残存期間が一〇年以下の場合は更地価格の五パーセント、一〇年ないし一五年の場合は一〇パーセントとされていることに鑑み、相手方が本件賃借権を譲受ける場合の対価は、これに準じ、本件土地の更地価格三、三五二、〇〇〇円に右借地権割合を乗じて算出された借地権価格から、その一割(いわゆる承諾料相当額)を差引いた金額、すなわち一五〇、八四〇円ないし三〇一、六八〇円が相当である。
二、これらの申立に対する当裁判所の判断は次のとおりである。
(一) 本件記録編綴の資料によると、前記一の(一)の(1)ないし(3)記載の各事実が認められ、かつ、相手方の本件建物及び本件賃借権譲受の申立の妨げとなるべき格別の事情は見当らないので、右申立に基づく裁判をなすべきこととなる。
(二) そこで、相手方が本件建物及び本件賃借権を譲受ける場合の対価について検討すると、次に述べるとおり、その金額は一、二八七、〇〇〇円(この金額は鑑定委員会の意見と同一である。)が相当と認められる。
(1) 本件土地の更地価格については、鑑定委員会の意見を相当と認め、3.3平方メートル当り約一一〇、〇〇〇円とし、その総額を三、三五二、〇〇〇円と評価する。
(2) 本件建物は建築後既に一〇〇年余を経過していて、老朽化の現象を免れず、また、本件賃借権の存続期間は約六年を残すのみであるけれども、反面、本件建物は現に人の居住の用に供されていて充分その効用を果しているのみならず、土台、柱などはかなりしつかりしており、適当な補修を施して管理維持すれば、借地法にいわゆる建物の朽廃にいたるまでには、なお相当期間の耐用年数を有しているものと認められ、かつ、相手方において、特に本件賃借権の更新を拒絶するに足る正当な事由を有している事実は窺えないことや、本件賃借権については、従来権利金、敷金等の一時金の授受がなされていないことなどの諸般の事情を参酌し、本件賃借権の価格を、右更地価格の約四〇パーセントに当る一、三四一、〇〇〇円と見積る。
(3) 本件賃借権を第三者に譲渡することを許可するものとした場合には、附随の裁判として、その許可を財産上の給付に係らせるのが相当であり、かつ、これをもつて足ると解せられるところ、その金額は、不動産取引における一般的な慣行や右(2)記載の各事情などを勘案すると、前記本件賃借権価格の約一〇パーセントに当る一三四、〇〇〇円が適当である。
(4) 本件建物の価格については、鑑定委員会の意見を相当と認め、復成価格3.3平方メートル当り六五、〇〇〇円の約一〇パーセントに当る八〇、〇〇〇円と評価する。
(5) そこで、相手方が本件建物及び本件賃借権を譲受ける場合の対価は、本件建物の価格と本件賃借権の価格とを加算した金額から、本件賃借権を第三者に譲渡することを許可するとした場合に申立人が相手方に支払うべき金額を控除した額、すなわち、一、二八七、〇〇〇円が適正なものと謂うべきである。
(三) よつて、申立人において、本件建物及び本件賃借権を相手方に、対価一、二八七、〇〇〇円にて譲渡すべきことを命ずるとともに、本件に関する従前の当事者双方の交渉経過や、現に、申立人の一家は申立人を除き新居に移転しているけれども、申立人において、本件建物に残留し、本件事件の解決にあたつていることなどの事情に照し、右譲渡に伴う当事者双方の義務の履行を同時になすべきものと定めるのを相当と認め、主文のとおり決定する。(松下寿夫)
別紙
相手方が申立人より本件建物及び本件賃借権を譲受ける場合の適正対価は金一、二八七、〇〇〇円であり、申立人が第三者に本件賃借権を譲渡することを許可する場合には、申立人より相手方に財産上の給付をさせるべきで、かつ、それをもつて足り、その金額は一三四、〇〇〇円が相当である。しかして、その算出の根拠は次のとおりである。
(1) 本件土地の更地価格(3.3平方メートル当り約一一〇、〇〇〇円)
三、三五二、〇〇〇円
(2) 本件賃借権の価格((1)の約四〇パーセント)
一、三四一、〇〇〇円
(3) 本件賃借権を第三者に譲渡する場合に相手方が申立人より給付を受くべき金額((2)の約一〇パーセント)
一三四、〇〇〇円
(4) 本件建物の価格(復成価格―3.3平方メートル当り六五、〇〇〇円の約一〇パーセント)
八〇、〇〇〇円
(5) 相手方が本件建物及び本件賃借権を譲受ける場合の対価((2)と(4)とを加算した金額から(3)を控除した額)
一、二八七、〇〇〇円
別紙目録(一)
大阪市東淀川区東淡路町四丁目一五八番地
一、宅地 211.57平方メートル(64坪)
のうち、別紙目録(二)記載の建物の敷地部分
100.56平方メートル(30.422坪)
別紙目録(二)
大阪市東淀川区東淡路町四丁目一五八番地所在
(登記簿上は、同区国次町二一九番地所在)
家屋番号 同町二三一番
一、木造瓦葺平家建居宅
床面積 40.49平方メートル(12.25坪)